『双極性障がい(躁うつ病)と共に生きる~病と上手につき合い幸せで楽しい人生をおくるコツ~』
この本の著者の加藤伸輔さんは、私にとって、実名を公表して双極性障害当事者として情報発信した最初の人だ。今はYouTubeやnoteなどがあり、実名や顔を出して情報発信をしている人が複数いる。ただ、この本が出版されたのは2016年だ。出版までの苦労や勇気や覚悟は想像を絶する気がする。
加藤さんは現在ピアスタッフとして勤務しながら、ピアサポートグループのメンバーとしても活躍されている。数年前の精神障がいピアサポート専門員の養成講座でお会いして、一緒にグループワークもした。とても穏やかで、気さくなお人柄だ、と感じた。
この本を最初に手に取ったときに感じた違和感は、サブタイトルの「つき合い」「幸せ」「楽しい」といったキーワード。当時、悩みに悩んで障害者手帳を手にした自分にとって、障害は人生の「敵」で、一生自分を押し殺しながら「闘っていく」相手。幸せや楽しさとは縁遠いと思っていた。
初めて読んだときは徹底した「自己開示」と経験に裏付けられたことばとリアリティに圧倒された。離婚、転職、自営業の失敗、借金、引きこもり…。浮気やお酒の失敗。自分とも重なる過去を知って、ああ、この人も地獄を見たのだなあ、と思った。
今回改めて読み直して、今の私には双極性障害と長期戦で付き合っていく上でのライフハックがいっぱいだな、と気づいた。加藤さんが日常生活で試行錯誤しながら実践している、工夫のようなもの。具体的で、すぐに実行できそうなコツの数々。例えば、診療に過度な期待をせず、短時間で効率的に診察を受ける工夫、は私も実践している。
ピンとくる言葉はたくさんあるのだが、今の私にとって響いたのは、「大切なのは調子を保てるかどうかで、あまり多くの制限にがんじがらめになる必要もないのかも」「気分が不安定になるきっかけはすべてが障がいのせいではない」 、ということば。
良い意味の「緩さ」やバランス感覚、微調整、ピアサポートというツールやテクニックをもっと活用してみよう。何でもかんでも双極性障害のせいにして、諦めてしまうのではなく、地に足のついた幸せや楽しさも追求してみようと思えた一冊だ。
<参考リンク>
地域精神保健福祉機構・COMHBO(コンボ) > 第15回精神障害者自立支援活動賞(リカバリー活動賞)≪当事者部門≫ 加藤伸輔さん
https://www.comhbo.net/?p=25493
立花晃
性別:LGBT男性
年齢:50代前半
診断名:双極性障害Ⅱ型
障害等級:障害者手帳3級、障害厚生年金3級
現在の就労状況:障害者雇用枠(オープン)事務
現在の家庭環境:実家で静養したのち、再度上京してひとり暮らし
併発している他の傷病:高コレステロール血症、難聴