『実録 解離性障害のちぐはぐな日々~私の中のたくさんのワタシ~』

漫画『実録 解離性障害のちぐはぐな日々~私の中のたくさんのワタシ~』をご紹介します。解離性同一性障害(いわゆる「多重人格」)と双極性障害の当事者Tokinさんによるエッセイ漫画で、それぞれの障害の診断に至る前後の経緯や葛藤、両者の相関関係など様々なことが描かれています。専門医・岡野憲一郎先生の解説もわかりやすかったです。

テンポよく展開する部分もあれば、立ち止まって孤独と向き合うようなところもあり、まるで一編をとおして変拍子や変調を繰り返す音楽のようでした。それってまさに躁鬱の「変調」や体感の「拍子」、時間軸の変化とも重なるのでは。悲しい場面ではこちらも勝手に同調して泣いてしまったり、周囲の方々の自然な反応に癒されたりしました。(すみません、上手いこと言おうとした結果いらんこと言わんでええねんに陥ってしまいました。)

終始Tokinさんの絵に対する「好き」がバンバン伝わってきて、彼女がそれをお仕事にされているという事実から勇気をいただきました。懐かしさと新鮮さが同時に感じられる、不思議な画風に惹かれます。きっと大変な辛さやご苦労があったと思うのですが、そういったことも独特のユーモアで豪快かつ真摯に表現されていて感服いたしました。

関連のフリーペーパー『ゾンビ道場』も何号か拝読したのですが、これがまた面白くて胸がすく思いです。Tokinさん曰く『ゾンビ道場』というタイトルは、「死んで(うつ)は、またよみがえる(躁)をくりかえして生活して」いることに由来するそうです(Vol1より)。本当に繰り返すのってしんどいですよね。私事で恐縮ですが、ラピッドサイクラーのため特に五臓六腑に沁みました。当事者さんの表現に触れることは素敵なことだと改めて認識しました。解離性障害の経験はなくても、「ひとりじゃない」と思わせてくれる作品です。