これからもきっと何度も間違えるんだろう。それでもいつか、そんな自分を許せるようになりたい。
2度目の再発後、わたしは病気に備えて貯金ばかりしていた。2回目のトリガーが趣味の映画鑑賞と買い物だったから、それ以降怖くて行けなくなった。将来を考えると不安で不安でどうしようもなくて、楽しみを避けてムダを省いて、徹底的に節約した。
そんな私に、同僚が笑いながら言った。
「結婚するの?」
純粋な問いかけ。
そんな前向きな理由じゃない。近い将来働けなくなると思ったからだ。後ろめたい動機を、笑ってごまかした。普通だったら、貯金することは明るい選択肢に繋がるんだろう。わたしにはその発想すらなかったけど。
節約と引き換えに得たものは、無趣味、無関心、恐怖心、虚無感、自分のストレスにも気づけない鈍感なこころだった。
完全な思考停止。その頃のわたしは周りへの反応も鈍くなって、本当に壊れた機械のようだったと思う。そんな自分をまるで他人事のように見ていた。
3度目の再発はじわじわと締めつけられるようなうつ状態から始まった。楽しみもストレス発散も自制して、必死で虚ろな毎日を過ごしていると、どうなるか。
まず、事情を知らない同僚から疎まれるようになった。最初はちょっとした疎外感、それが次第に露骨な嫌みや無視へと変わっていった。これはいじめと言うんだろうか。
元はといえばわたしの余裕のない態度や、配慮に欠ける行動が原因だ。そこに病気という理由があったとしても。
わたしはトリガーを怖がりすぎた。仕事でミスをしないようにするだけで、いっぱいいっぱいだった。そんな人間の近くにいたいと思う人なんているだろうか。自責の思いで動けなくなった。
これからもきっと何度も間違えるんだろう。それでもいつか、そんな自分を許せるようになりたいと思う。わたしは病気とのつきあい方を間違えたけど、いつも一生懸命だった。それは今も変わらない。毎日悩み、考え、迷いながら進む。それは誰だって同じだろう。
そんなことを思いながら、いつも通り朝日を浴びて身支度をする。今は落ち着いた気分、でも数時間後はどうなるかわからない。
「さて、行くか」
一日の始まりだ。
うみ
性別:女性
年齢:40代
診断名:双極性障害1型
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